アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【64】
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カーソル矢印を載せ、トラックボールで帯に合わせて動かし、残ったクルーに尋ねる。
アルフォンススが動く。
「油だ。船の燃料だろう。本件は船舶トラブルと判断する。……甲板二人、本船直下に油の帯が確認できるか」
問うて2秒。
『……確認した。確かに油だ。東西方向』
「副長、この場所の海流」
「北北西より南南東へ2ノット」
「海図をスクリーン上に照査。レムリア」
「……はい」
地図が出ている子画面の隅に海図と書かれたタブがある。
ペンでチョンとやると地図に重なった。
「シュレーター西北西へ微速。副長感(かん)あるか」
意味、テレパシーは何か拾ったか。
「いえ何も。遭難者は意識を喪失した状態かと」
「了解。シュレーター、進路西北西。両舷前進微速(りょうげんぜんしんびそく)」
その指示の意図、海流に沿って油が流れているのだとすれば、海流(北北西-南南東)と油の筋の方向(西-東)から、全体として西北西から流れてきているので、それをさかのぼって行く。
シュレーターが舵を西北西へ倒し、スロットルレバーをわずかに前方に動かし、船が動く。
レムリアは直下の海面を映していた正面の大画面を、船首カメラの映像に切り替えた。これで〝前方を見て船を動かす〟スタンダードな状態である。
「いいぞレムリア。それでいい」
アルフォンススが一言。この辺りの作業、ゲリラ出没地域で無人探査車を出すのに状況が似ているとレムリアは思う。……だからあなたの経験が必要なのですとは副長セレネから。
これだけのエレクトロニクスと、オカルトの極北たる魔法・超能力が、同時に存在しているというこの現実。
画面の奥の方に何かが映った。
レムリアがズームのためにトラックボールを走らせるのとほぼ同時に、イヤホンがピンと小さく鳴った。
『操舵室。先方に船影』
ズームアップしたカメラが、それを捉えた。
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(つづく)
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