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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【39】

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Lemuria1
 気がつけば結構寒いではないか。彼女はコートの前を併せた。列車の温度がいかに外気に応じたきめ細かいコントロールがなされていたか、良く判った。
「お風邪を召されます。こちらへ」
「ありがとうございます。お世話になります」
 ハロルド氏に付いてプラットホームを歩き、線路を渡って駅建屋へ向かう。建屋と言ってもホームの規模が規模であるから、応じた重厚な趣。美術館の別館か、それこそ城のインビテーションホールとしても通用しよう。
 コルキス・インターナショナル・ステーション。
 駅員の敬礼を受け、石畳の駅前広場へ出ると、尻尾で身体を拭う白馬が四頭。
 馬車。カボチャが化けた物ではないが、白い球形をモチーフ。
 そして、馬の背の向こうに広がる光景は、文字通りおとぎの国。
 400年前の中世雰囲気そのものを観光資源としているのがコルキスである。下世話な言い方をすれば、国全体がテーマパークなのだ。ただ、本当の独立国家という点が遊園地と異なる。雰囲気優先であり、当然、クルマを始めエンジン付き動力車は乗り入れ禁止。緊急車両も電気自動車という徹底ぶりだ。水路と船の街ヴェニスの山間版とでも書けるか。最も、駅前町並みで生活用品の全てが揃い、住人は〝住んでいること〟が生業そのものであるから、エネルギ消費の多いパーソナル移動手段は不要ではある。
 馬車の周囲は既に多数の観光客に囲まれている。おとぎの国の豪奢な馬車に、乗られるお方はどなた様?そんな所であろうか、興味津々の衆目の中へと彼女は歩み出す。
 執事を伴い花咲くような少女が現れ、その姿に感嘆とどよめきが観光客から上がる。通りがかって事態に気付いた他の観光客、恐らく住人までが住居を出て集まってくる。
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(つづく)

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