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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【57】

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 ラングレヌスが報告し、アルフォンススが宣言し、シュレーターが操縦桿を手前に引く。
 画面が動く。
 船が少し揺れ、浮き上がったと知れた。
「浮上しました」
「INS始動」
 アルフォンススがその〝いんす〟と称される装置を始動したようである。振動騒音の類が一切消えた。
 しんと静かになる操舵室。INS:Inertia Neutralization System。慣性力中和装置。
「INS動作正常」
「光圧シールド透過モード」
「透過シールド作動。フォトンチューブ確立確認。リフレクションプレート展開固定」
 呼応してか、レムリア傍ら船尾カメラに動きが生じる。船尾の丸みが、くす玉のように左右に割れ、くるりと回って裏返しになり、船尾にパラボラアンテナを付けたような姿となる。
「全機能動作正常確認。起動シーケンス全完了。副長復唱せよ。アルゴ発進」
「発進」
 セレネが答え、アルフォンススが船長席机上のボタンを押す。
 船が動く。
 動き出した。レムリアが思ったその瞬間。
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 見たままを書けば、正面スクリーンに映っていたのは最初、トンネルの黒い断面であった。それが刹那、文字通り刹那、画面左右に一瞬白い光が現れ、次いで一面の青に変わった。
 その青が空であると判った時、レムリアのコンソール上の画面は、世界地図を映していた。地図上の赤い丸印が船の位置なら、アラビア半島東端を南下中ということになる。
 本当だろうかという問いが声にならない。まばたきする前はアルプス山懐コルキス王宮の地下にいたのだ。さながら瞬間移動である。これは夢か、それともこれこそ21世紀なのか。アルゴ……その名は建造した船大工の名とも言われ、快速の意とも伝わるが、今乗るこの船の超高速においては、当然、後者であろう。そして、黒海の奥地へ向かう能力と乗り組んだ英雄達は、星の海とこの奇蹟のメンバーとして、21世紀に蘇った。ちなみに、アルゴ号の乗組員をアルゴナウタイ(Argonauts)と言うが、これは、宇宙飛行士を意味する英語アストロノーツ(Astronaut)の語源である。
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(つづく)

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