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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【101】

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「あそこから中へ。リフトを下ろしました」
 リフトとはエレベータのことであるが、ここでは無論船体そのもののことだ。空飛ぶ船とは言えないためにそう表現しただけである。船内には光子ロケット機関の異常に備え、幾つか隔壁が設けられている。そんな壁の一枚を通路にセットした。船尾が下向きなので、隔壁は床になる。
 ブザーと赤色回転灯。
 地下の空間に風が起こる。何かが空気を動かしている。
 船のものではない。
『原子炉の温度上昇を検知』
「奴らは水を抜くつもりだろう」
 EFMMメンバーの一人が言った。
「水が抜かれると?」
 レムリアは訊いた。メンバーと、マイクの向こうの乗組員に。
『原子爆弾になる』
「チャイナ・シンドロームだ」
 双方から回答。前者、イヤホンに届いたシュレーターの回答で、理解は充分であろう。
「走って!」
 レムリアは言いながら、軍人達はどうすべきかと自問した。
『彼らは、毒を口にしました』
 セレネが言った。彼女の超感覚による分析では、警備する政府軍兵士が自ら支配者に君臨すべく核クーデターを計画し、ここを占拠、際してプルトニウムの生産量を増加させるべく、住民による所定の工程を逸脱させた。結果、水のもつ核反応抑制効果を上回るウランが投入され、事故を誘発……
 それは街角の電光ニュースのようにレムリアの意識に流れた。しかしレムリアには、そんな情報に価値は感じられない。
 EFMMのメンバーを船へ導く。全員の搭乗を待って、自らも船内に入る。
 昇降口のゲートが閉まり、イヤホンに警報。通路そのものを放射線汚染区域として前後封鎖。基地に戻って処理するまで出るべからず。
 それは良い。問題は基地に帰ること。すなわちここからどうやって脱出するか。
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(つづく)

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