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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【84】

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 大人達に迎えられて喜んでいる。
 子どもだから大人に囲まれて安心しているのか、大人の一員と認められて安心しているのか。
 どちらの見方も恐らく正しいのだろう。そしてどちらにせよ言えることは、自分の居場所が出来た。
 自分の持てる全てを注げる何かが見つかった。
 その立場になると、一昨日までの自分は、今日をやり過ごす、そんな日々だったと気付かされた。更にこの街へ来た動機を反芻すれば〝こんなのはイヤだ〟。すなわち〝これをやりたい〟からではない。
 パラダイムシフトであった。
 〝やれ、自分〟
 困難は予想される。ただ、喜びと確信も同時に存在する。
 レムリアはまずメールのリストを各国のEFMM協力機関に転送する。アヘンが抜け次第、この子達を帰したい。
 子ども達とのコミュニケーション能力も高める必要があるだろう。小手品で人心掌握、はよく使う手だが、それよりプリミティブな手段は食べ物お菓子か。
 アイディアと課題が湯水のように意識に湧き出す。幾らでも出来ることがあるし、やらねばならないことがある。
 翌日からの10日間。
 彼女にとって、それまでの2年間全てを凝縮するよりも充実した日々になった。
 まず手を付けたのは世界情勢の掌握と周産期に関わる知識の充実であった。
 EFMMであれアルゴ号であれ、出かけて行くのは怪我や疾病、災害が多い地域であり、背景には戦役・貧困がもたらす社会基盤の整備不足がある。可能性の高い地域をあらかじめ把握しておくことは無駄ではない。
 そして、そうした場所で最も弱い立場にあるのが赤ちゃんとお母さん。栄養が最も必要で、しかも病気に対して最も弱い。
 それと、日本語。
 EFMMは日本と縁が薄いと書いたが、日本からの寄付による食料・薬品・資材は実はかなり多く回ってくる。ただ、かなりの数〝日本語〟の物品であって、メンバーが〝解読〟できず、使えなかったりするのだ。自分は多少なりとも読めるわけだが、更に問い合わせするなど、充実化できれば。
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(つづく)

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