アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【85】
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この考えに、先の青年、相原の存在が大きくなりそうという認識が重なった。彼とコミュニケーション取れるようになれば、日本とコネクションが出来上がる。
次は地理歴史。
理由は単純、〝今〟の前には〝過去〟があり、過去から今への流れには大自然環境の影響が大きいから。
繰り返される大地震、噴火や洪水、暴風雨。それらはとりもなおさず、救助活動の対象となる。
見えてきたのは〝躍動する大地〟。そして〝つながり〟。もう一つ書くことを許されれば〝循環〟。
大気であれ、海であれ、大地の下であれ、ダイナミックに巡っている。
船に乗るという行為は、地球全体を一つの視野に収めるというパラダイムシフトを迫った。
相応しい、か、どうかは判らないが、その視点は、考えのとっかかりになる程度の情報を得たように思う。
そして時は来た。
電話が彼女を呼ぶ。
彼女は応えて部屋を出る。ウェストポーチに必要最小限の応急処置用具と衛星携帯電話。
及びお菓子も少し。子ども達を相手にする時のみならず、何か食べ物を口にすることは、パニック状態の心を落ち着かせる。
照らす満月の光を浴びて彼女はレンガの街路を駆け抜ける。街娼さんが客を取る古いビルの脇から運河へ。……この街には、この制度が生きている。
岸に船有り。
見た目には観光用の帆船然としている。この場所を選んだのは、上記した女達のビルから運河側を見る人は多くないだろうという考えによる。
スロープは岸に付けられており、見張りであろう、大男アリスタルコスが腕組みして立っており、太い腕を見せている。
「用心棒みたい」
彼女は彼に言った。
「おかげさまで守る姫があってな。さ、乗った」
「はい」
操舵室に顔を出す。
「お待たせしました。すいませんこの間は荷物を置いたままで」
レーダ席に腰を下ろし、イヤホンマイクを耳にねじ込む。
コンソールにタッチしてトラックボールとディスプレイ群が電源オン。
「構いませんよ。貴女の動く別荘になれればこの船も本望でしょう」
セレネが笑顔。
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(つづく…野郎共はモノクロかよ)
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