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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【29】

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 しかし、EFMMの主旨からして、当然、行ったことはない。
 いつか行ってみたい。溶け込んでみたい。その東京行きオリエント急行に自分が乗れれば良かったのに(作者註:当時の旅費400万円)。
 ロンドが終わった。
 リヒテンシュタインからという顎髭の男性が恭しく会釈して下がり、代わりの踊り手は先のご婦人。
「ああ、やっと私の番ね」
 手を合わせてワルツ。
「舞踏会で……子どもの頃からの夢だったのよ……」
 婦人は目元輝かせて車内を舞った。
「素敵な王子様でなくて申し訳ないんですけど」
 彼女ははにかんでそう返す。
「いいえ、素敵な王子様と踊るならどんなお話にも出てくるの。お姫様と踊れるなんてお話にも無いじゃない。それはもっと、とっても素敵で凄いこと……」
 そこで婦人に異変が生じたことに彼女レムリアは気付いた。
「ああ飲み過ぎてしまったかしら……」
 アルコールを召し上がって、踊る。
 一般にアルコールを摂取すると、まずは血管が拡張し、結果血圧が下がる。
 その後、ミネラル分が排出され血管が収縮するため、血圧は上がる。
運動するという行為は、多くの血液を筋肉に必要とする。このため、血圧が下がる時間帯では貧血を誘発し、上がる時間帯では更に高血圧を招く。
 レムリアは踊りながら婦人の手首を握って脈を診た。
 速くて浅い。貧血の兆候。つまり前者だ。
「奥様いけません……」
 ダンスを止めようと思ったが少し遅かった。
 スイッチが切れたように婦人が倒れてしまう。
 レムリアはそのまましゃがんで婦人を抱え込む。異変にピアノが途切れ、人々が何事かと覗き込む。
 婦人が嘔吐してしまう。レムリアはドレスを翻し、衆目から婦人の顔を覆い隠す。
「ごめ……ああ……」
 婦人の声が言葉にならない。貧血の故に脳の活動が下がり、事態の認識、言葉の選定、発声、その全てが遅くなり、しかも不完全。
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(つづく)

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