アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【123】
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「秋葉原知ってるの?」
「テレビで見たことあるよ。メイドさんがコンピュータの部品売ってるんでしょ?へぇ~こんな感じなんだ」
レムリアの認識にちありちゃんは苦笑。
「ちょっと違うけど……まぁそんな感じ。最近は執事もいるんだよ」
「へえーっ!」
レムリアの誤解が解けるのは随分先の話である。
公園を横切り、教会脇の孤児院へ。怪しい姿のはずだが、かえって溶け込む不思議。
エントランスでドアベルを鳴らすと、シスターの声で応答。
「すぐ行きますからどうぞお入り下さいな」
……教会という性質上、来る者は拒まず、なのだろうが、レムリアとしてはもう少しセキュリティレベルを上げた方がいいのではと正直思う。アムステルダムは良くも悪くも自由な、自由すぎる都市だからだ。ちありちゃんを連れてきたのも昼だと判っているから。
テレパシーを持つ自分ですら、日が暮れた裏路地は怖い。
ドアを開けて顔を見せる。丁度シスターが現れ、オウ!と、目と口をアルファベットの〝o〟の形に小さく開く。
「(あなたはあの時の)」
通訳の部分は略す。
「お世話になったそうで」
ちありちゃんは頭を下げた。
レムリアが日本の〝お辞儀〟の意味とタイミングを知ったのはこの時である。
この動作は日本においては謝意を表すと、レムリアはシスターに説明した。
「日本からわざわざ?」
シスターはその事実に気付いて更に目と口を開いた。
「誘拐してきました」
レムリアはウィンクして付け加えた。
「あらあらまぁまぁどうしましょう。日本、フジヤマ、アキハバラ、キョウト、お茶。そうよお茶をお出ししなきゃ。遠い遠いところいらしたんですもの」
来客が遠すぎて類推が及ばないせいか、悩ましく右往左往するシスターの向こうを、男の子がひとり、通りがかる。
「あ、『ヴァルキューレシルバー』」
その子はすぐにちありちゃんのコスプレに気付いたようだ。指さして声を挙げる。
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(つづく)
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