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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【99】

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 コンクリートが湿った地肌を見せる地下の一室。
 EFMM団長は、防護服の奥で、金色の眉に困惑の皺を寄せた。
「もう血液が足りんぞ」
 ベッドに仰臥する軍人は口元に呼吸器を付け、激しく息をし、その旨心電図に表示が出ている。
 ポータブルの輸血装置は間もなく残量がゼロになると警告している。
「ない、では困るのだ」
 別の軍人がしゃくるように銃を動かし、団長は金色の口ひげをぴくりと震わせる。
 急性放射線障害で大量の輸血を行っているのである。
「核物質を侮るからだ」
「黙れ」
 引き金に指が掛かり、銃の部品金属が動いてわずかに音。
「撃てば良かろう。その代わりこの将校は確実に死ぬ」
「理屈だな。では貴殿スタッフの血液を頂戴するとしようか」
 軍人はアフリカ系女性スタッフに銃口を向けた。
 大きな音がした。
 発砲ではない。
「またかっ!」
 銃の軍人が叫び、背後を振り返る。
 また……それは核事故の再発懸念を示した。
 縦横に配された配管群の向こうが白銀の光に包まれる。そこを〝炉心〟と誤認しても確かにおかしくはない。
 しかし正体は強烈な照明である。降ってくるように上方から照射され、地上と結ぶエレベータを包み、見えなくした。
 それは、天とこの地下とを直結する光の筒そのものであった。
 無論、核事故でも照明でもどちらでもない。アルゴ号の形成する光圧シールドチューブである。光子の噴射によって白銀となる、その領域が上方から降りてきたのである。
「(意図したこと形をなさず)」
 光の筒から、少女の声がした。
 軍人達にとっては、未知なる言語であった。
 彼らは発砲した。
 炸薬の音は鋭いインパルスとしてコンクリートの空間に反響し、鼓膜を貫通する。
 同期して、声の主をも貫き、絶命或いは激痛の絶叫が聞こえる、はずであった。
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(つづく)

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