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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【102】

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『近傍最高温度720ケルビンに上昇』
 逃げること自体は容易である。ただ、現在ここで進行しているのは、核反応。
 炉心溶融、象の足。……放置した炉(リアクター)の行く末を言う語を幾つか知っている。
 チャイナ・シンドローム、EFMMのひとりが言ったそれも、行く末を示す語のひとつ。それは原発の炉心が冷却剤を失い超高温の火の玉と化し、溶融どころか大地を溶かしながら地中へ進行、そのまま地球内奥をも突き抜けて裏側まで行ってしまう……アメリカの反対側は中国……から来た言葉。
『緊急冷却装置はないのか』
『本船の機能で何か使えないか』
 無線越しの男達の錯綜。
 何も答えを用意できない自分が歯がゆい。仕方がないと判っているが、何も言えないのは辛い。……だから自分はこの地に呼ばれなかったのか、とも思う。
「姫……」
 EFMM団長が何か言おうとした時、
『近場に大量の水はないか』
 その、船長の舌打ちは、レムリアにとって良く聞くセリフの一つであった。
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-近くに水は。水を下さい-
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 戦闘に巻き込まれた難民にまず必要なもの。まず求められるもの。
 果たして、団長が呼ぶ声に対し、レムリアは返事の代わりに問うた。
「このウラン村で活動する際、水はどこから」
「ああ、5マイルほど東の……」
 答えに被さりイメージが到来した。
 団長の記憶である。医療団の来訪に合わせ、村の人たちがこぞってその距離を歩き、湯を沸かし、活動の準備を手伝う……。
 平和そうに見えた、その光景はどこへ。
 テレパシーが答えを寄越す。正確に言うと、セレネの方が若干早く、ややあって、レムリアが気づく。
 同時に、何が今進行しているのか、〝風〟の正体を知る。
 人々が、多くの人々が、〝浮かんで〟来る。
 村の人々である。そして、生きてはいない。生きていないことにすら、気付いていない。
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(つづく)

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