アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【90】
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アルフォンススは腕組みし、更にこう付け加えた。
「もう一つ。聞きたくないかも知れないが言うぞ。総員、放射線防御準備。シュレーター。状況、核」
「了解。核施設接近モード」
船は時間的にとうに現地に到達している頃合いだが、次第に減速し、あと10キロというところで一旦静止した。光圧シールドの出力を最大とし、放射線測定を行いながら徐々に接近開始。
つまり。
「核事故の可能性があるということでしょうか」
レムリアは訊いた。
「否定は出来ない。君の言う通り放射性物質の知識を持たない作業者であれば、不適切な取り扱いで事故を起こす可能性もあり得る。それでインマルサット無線機器や、電話が破損したとも考えられる。EFMMメンバーは放射線防護服を」
「被曝者を診察するので着用しているはずです。ただ、私は現地に呼ばれたことはありませんので確定的なことは言えません。何せ随行禁止ですので……」
そうだよ。レムリアは自分のセリフに〝電話の違和感〟の正体を見た。
ここに団長が自分を呼びつけるはずがないのだ。あまりにも危険すぎると許可してくれなかったのだ。
なのに発呼され、あまつさえは切れた。
「団長さんの故意、という事は考えられませんか?」
セレネが訊いた。
わざと、故意に私に電話した。
あり得ないことをした。
あり得ないことが起こっているというメッセージとして。
「EFMMはどうやってここへ来ている。レムリア」
シュレーターが尋ねる。
「ヘリコプターと聞いています。大きくEFMMのロゴとURLが書いてあるはずです……」
レムリアの声をかき消すように船からアラーム。画面に赤ランプを模した点滅が現れ、放射能標識と物質名。
レムリアは一呼吸置いて、読み上げる。
「セシウム137有意」
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(つづく)
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