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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【41】

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「お乗り下さい」
 本当にエレベータであるらしい。中は見慣れた篭のデザインだ。右手に操作ボタンと階層表示。天面近くに現在位置を表示する棒グラフ型のインジケータ。
 それは豪奢な城に似合わず機能優先の意匠である。素っ気ないと言って良いほどで、乗ってきた寝台車と対極に位置する。どちらかというと研究所(ラボ)とかそんな建物を思わせる。ここが実は国の先端研究所、だったなら理解できるが。
 ハロルド氏は彼女の荷物を篭の中へ運び込み。
「さて姫様。申し訳ありませんが、わたくしはこれより先に足を踏み入れる権限を有しません。殿下お一人となってしまいますが、降りた先で女王陛下がお待ちの手はずです」
「え……」
 ちょっと心細くなるというか、王族として迎えられる場合、ひとりぼっちにされることは基本的に無い。
 ただ、ここへ来た主旨は何だか壮大なボランティア活動である。と、彼女は思い出す。EFMMでは姫と呼ばれこそするが、現場で何に手を出すかは個々の判断であり、単独行動も当たり前。
 ここで切り替えろということか。
「判りました。ありがとうございました」
 彼女が答えると、ハロルド氏はボタンを押し、ケージ外へ出、恭しく頭を下げたまま、扉が閉まって見えなくなった。
 エレベータが動き出す。感じるベクトルは下方である。城の地下へ向かってエレベータは加速して行く。
 地下に何か設えたのだろう。大規模な救助プロジェクト。
 そのための施設が地下にある。
 エレベータは風切り音を立て、恐らく高速で降下し続ける。米国シアーズタワーかエンパイアステートビルディング級の長さである。日本的な書き方をすれば大深度地下と言えるか。天面近くの位置グラフが左へ左へ動いて行く。
 ブレーキが掛かった。
 漸次減速し、着床したらしくドア上にランプが点る。
 扉が開く。
 彼女は息を呑む。
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(つづく)

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