アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【46】
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「あなたの、超絶の力を貸して下さい。レムリアさん」
気付く。船長なる男性は自分のことを魔女と呼んだ。
超絶の人々。奇蹟の天使の手助け。
看護師、としてではなく?
「両方です」
セレネは言った。レムリアは思いを意識に浮かべただけだが、思いの答えは言葉で来た。
レムリアが、そのことに気付くのは、今少し後。
「私たちの目的は、奇蹟を起こすこと。奇蹟を要するような緊急事態において、奇蹟の天使の負担を減らすこと。人が出来ることは人がするべき。常識を覆す能力を結集し、世界のどこでも瞬時に駆けつけ、奇蹟を起こして救い出すこと」
セレネは言った。つまり。
「奇蹟を待つのではなく、自ら起こして人を助ける」
レムリアは認識を口にした。
「その通りです」
常軌を逸した発想。一般的な回答はそうなるだろう。だが、自分を自分の能力の故に呼んだのであれば、話は別だ。
アルフェラッツ・ムーンライト・マジック・ドライブ。魔法の血脈を知り、その故に自分を呼んだのであれば。
そう、彼女レムリアは事実魔法使い。21世紀現代に受け継がれた術の担い手。
最高の秘密。と同時に、最も信じてもらえないこと。しかし、この船に集った人々はそれを知り、信じ、どころか、この能力を人命救助に活かせ。
〝月光〟という呼び名の一致は何かの縁か。
ただ。
「でも私の能力は人命を救うレベルにありません」
レムリアは思わず唇を噛み、うつむき、拳をギュッと握る。魔法、人命救助で使えればEFMMで惜しげ無く使っている。そうしないのは能力の内容、及び起動に手順と時間を要するから。更には〝ムーンライト〟の呼称にあるように、月の満ち欠けと明確に連動する。新月近辺では手品レベルにしかならない。
速効性に欠け、能力自体も不足。今まさに必要な状況で長々呪文を唱えるわけには行かない。
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(つづく)
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