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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【110】

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「ふふ、その表情は初めて告白された少女みたいだがな。オレ達の誰も異論はないだろうよ。ところで村はどうなったんだ?」
「証拠隠滅のため……」
 言葉を濁すがこれで通じるであろう。
「何か報道は?」
「判りません。その後何もメディアを見ていないので」
「そうか」
 ノックがあり、病室の入り口に人影。白髪混じりで顎髭の男性医師。
「サムエルソン、生で貴殿に会えるとは思わなかったよ」
 ジャパニーズ・イングリッシュという言葉を聞いたことがあるが、そうとは思われない歯切れの良い英語で、男性医師は言った。
「ドクター・ナカムラ。初対面だが初めてじゃないな。不思議な気持ちだ」
「こちらもだ。しかも放射線障害の患者で来院とはな、このお嬢さんが『病院の上です』何かの冗談かと思ったね」
 日本人医師、中村は笑みを見せ、検査装置の数値を見た。
「今のところリンパ球減少などは見られない。しかしどこの事故に巻き込まれたんだい。核事故ならニュースにもなるはずだが……」
 中村医師は団長サムエルソンのベッド脇からテレビのリモコンを取り出し、ベッドサイドのテレビに向けた。
 画面と音が出る。ニュース・ショーだとレムリアは理解した。
 そして次の瞬間、思わず椅子から立ち上がった。
 後ろ姿の女の子。画面下にテロップ〝プライバシー保護のため音声は変えてあります〟。
「どうしたね?」
「彼女、ちあり・いぬかい……」
「よく知ってるなぁお嬢さん……神隠しか誘拐かってな」
「kidnap……」
 誘拐を意味する単語、kidnappingの途中でレムリアは口ごもった。
 恐怖に似た感情を覚える。なぜなら、誘拐という見方は正しいのだが、状況から嫌疑は流星を観測していたあの青年に掛かるからだ。
 テレビの声に耳を凝らす。『良く覚えていません。空を飛ぶ船に乗って、天使の声が聞こえていました』
.  
(つづく)

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