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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト【31】

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 バーテンダー氏が代わってくれた。深酒で体調不良。応じたスキルを持っていておかしくない。
「ではお願いします。私は呼吸の方をやります。5回1回で」
 彼女は頼み、婦人の口腔内に手指を入れて吐瀉物を掻きだし、更には口で吸い出して人工呼吸。マッサージ5回に対し呼吸1回。
 バーテンダー氏のトランシーバが何事か。
「ああ、僕が代わります」
 出るに出られぬバーテンダー氏に、舞踏会を見ていただけのタキシードの男性が挙手し、ソファを立った。
 バーテンダー氏とマッサージを代わる。こういう場合の知識手段の所有率、行動へ移す実行力は、一般に欧州では大きい。
 バーテンダー氏は無線機を耳に唇を噛んだ。
「姫様、残念ながらお医者様は……今列車長が参ります」
 言葉から程なく、担架抱えたジェフ氏と、シーツにタオルを持ったサロンのチーフ。
「ひ、姫様一体何が!?」
 列車長……他ならぬジェフ氏は、驚きながらそれでも担架をカーペットの上に据えた。
「医師の診断が必要です。どこかに列車を止めて……」
「了解いたしました。ただあの申し訳ありません。列車はローゼンハイムを通過しましたので、この次緊急事態契約を結んでいる病院は国境を越えてザルツブルクに……」
「間近の小駅で構いません。私の方で病院と緊急輸送の手配は出来ます。駅に停車の手配だけを。イン川は渡りました?」
「承知しました。川はだいぶ前に過ぎています」
「どなたか申し訳ありません。人工呼吸の心得のある方は」
 サロン内に声を出すと、サロンのチーフが彼女の元へ。
「私がやりましょう」
「お願いします」
 彼女は婦人を二人に託し、窓際に向かい、ナイトドレスの下、ウェストポーチから、軍用無線機に近似の機械を取り出す。
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(つづく)

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