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【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-08-

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 すると口々に。
〈判らないの。何も見えなかったから〉
〈見えた時には箱の中に入っていたの〉
〈お店にいたの。みんなカワイイねって言ってくれたの。でもそのうち『もうダメだ』って言われて箱にポイって。痛かった〉
 三番目のテリアの子は推定ができます。販売用血統書付きで、
“期限切れ”
 判らないのは他の子達。すると。
〈私どもの基準で言えば、このマンチカンは親が食べてしまいます〉
 ネコが一言。つまり病気の子。
 要するに。
〈みんなおいで〉
 霊体を抱きしめるという行為が適切な表現か判りませんが、悲しみと、ねぎらいと、謝罪の念で私は幼き魂達を囲い込みました。この翅霊体に触れることが出来ます。
〈何で泣いているの?〉
〈何で謝っているの?〉
〈翅あたたかい……〉
 理由を説明しなくては。
 あなたたちは捨てられた。
 捨てられて処分された。
 売り物にならないから捨てられた。
 そして、死んだ。
〈だから、君たちを見ることが出来る人間さんは、他の動物たちは、少ない〉
 余りのひどさに息が苦しくなります。一般に死を理解し、安心と安寧を自覚した意識は、意識だけの世界……天国へ昇るわけですが、生まれて程なく、何の感情も愛も無く、機械的に殺されたこの子達にとって“安心”とは何なのでしょう。
〈行けるなら行きたいです〉
 誰かが言いました。私が思い浮かべた天の国。
 妖精の本拠、と言うべきでしょうか、通称フェアリーランドは天国の一角にあります。そこでは、何らかの生命体は生命体として好きな姿を取れます。ただ、死を自覚せぬままそこへ昇ると、その時点での滅び行く肉体の姿で彷徨うこともあります。
 彼らが、今ここで、肉の身を無くしたまま、死を知らず彷徨うように。
〈そこには、みんないるの?〉
〈ええ〉
 そう答えたら、幼い意識は一斉に同じ意図を示しました。
 すべきことは一つのようです。私は腕や肩の動物たちに降りてもらいます。
「送ってきます。そして、ここが何なのか暴く必要があると思っています。人間さんの産物に手を加えるので許可をもらってきます」
 幼き魂達を抱え、呪文一閃。
「リクラ・ラクラ・シャングリラ」
 

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