【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-12-
ガイア様と犬猫たちの姿は既にそこにありません。無事に“召された”のだと得心します。
なれば、私のミッション。
城の入り口まで戻ります。後は飛ぶだけですが、視線に気付いて振り返ると、窓口彼女がこちらを見、ついで不思議な表情を見せます。
「さっきの子達は?」
犬猫のこと。
「ガイア様にお任せしました」
「そうですか……あの、今日のエウリーさん何か怖いです」
そこで私は微笑みの一つも作れたでしょうが。
彼女も妖精として応じた能力を有しており、隠し事は無意味。
「何てこと……」
私は怒りを覚えました。比して彼女は悲しみに包まれたようです。
顔を両手で覆い、溢れ出した涙がボロボロ。
「ああ、ごめんなさい……あなたに悲しい思いをさせるつもりは無かった……」
「いえ、いいんです。何も知らない方がもっと不幸です。で……地上へ行かれるんですよね」
ええもちろん……私は答えて消えようとして、彼女の気持ちに気付きました。
「だめでしょうか。地上の経験は確かにありません。でも、知ってしまって座して為さずなんて」
ガイア様は、私の意のままに、とおっしゃいました。
勝手判らぬ素人が、となってもおかしくない状況ですが、私たちは妖精ニンフ属です。その仕事、昆虫や動物たちの相談相手。
一瞬で状況を把握する能力は必要故にDNAに。無知はハンディキャップになりません。
必要なのは、違ってくるのは、そこから的確な結論を導く能力。
「手伝ってくれるならこの上ありません。いますぐですが来てくれますか?」
私は訊きました。この事態、彼女が知り得てそう思う、ということは、そうすべきだという大いなる采配なのでしょう。
「はい、行きます先輩」
彼女は立ち上がり、奥の方で別の窓口担当さんが気付いて振り向きます。
「判りましたいらっしゃい」
「はい!」
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