【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-13-
彼女の名はナイアデス。泉の精と言ったところでしょうか。私エウリディケも神話上は同じく泉の精霊。
ナイアデスは窓口からそのままテレポーテーションで出てきました。
奥の方から慌てた様子のもうお一人。
「ちょっとエウ……」
窓口事務は担当2名。そのもう一人、名をパシパエ。新入り事務のナイアデスにOJT(オン・ジョブ・トレーニング)……だったのでしょうか。
パシパエはふくよかな身体で窓口から飛び出さんばかりに乗り出して来、はっとしたような表情を見せました。
並び立って見返す私たち。オーラライトが見えたでしょう。本気のそれは白く見える。
そして、事態は、一瞬にして伝わったはずです。
「判りました。ガイア様のご下命とあれば」
渋々承知。パシパエごめんね。
「謝らなくていい。あんたは私の誇り高き友達」
パシパエはそう言って胸を張りました。
「ありがと、ナイアデス、行きますよ」
「はい」
私は言うと、呪文一閃。
戻ったのは動物たちが待っていた先のベンチです。午前1時21分。
分かれてから40分程経過、という所でしょうか。安堵という名の歓迎の意を多数受けます。それなりに心配してくれていたようです。
「みんなありがと」
〈おや妖精さんがお二人になった〉
「彼女はナイアデス。今からすることを手伝ってくれます」
「よろしくね」
概要説明します。内部を調査し破壊する。そしてこれが大事“白日の下にさらすこと”。
破壊。この概念を私から聞いたことに動物たちは一様に驚きを示しました。
確かに天国サイドの住人は“守る”“生み出す”側には立っても、逆は無い。
ただ、自然は時に破壊を伴う。
破滅はされるべくしてその種を見舞う。人間さんはそれを淘汰と呼ぶ。
「あっては、いけないんだ」
私は自分に言い聞かせるように言いました。
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