【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-14-
〈エウリーさん、黒い〉
ネズミのつぶやき。
黒いのはオーラライトから受ける心証。怒りは赤く、破壊の衝動が混じると赤黒く変わって行く。黒はその極北。
つまり今、私の心は荒んでいる。
「あなたが来てくれたのはとても素晴らしいことなんだって今確信した」
私は言って傍らナイアデスを見ました。
「え……」
戸惑う彼女のオーラは薄紅。照れた気持ちの反映ですが、彼女の基本スタンスはショックと悲しさで、怒り狂ってる私と対極。
そんな私を動物たちは近寄りがたいと考えているようです。詳しく言うと、心の中に暴風が吹くというか、その風の騒音で私の意図が聞き取れない……そんな状態になるようです。
人が悪意持って近づくと動物たちが感づいて逃げ出すのはそのため。カラスなど顕著でしょうか。
そこで。
〈あの、エウリーさん〉
老犬が改まって。と、言っても、その時点で彼の意図するところは判明しています。
〈来るな、とか……〉
「言わないよ。他にも、手伝ってくれるというなら、一緒に行きたいと思います。あなたたちだからこそ、お願いできることも沢山あると思うのです」
マムシの熱感知など良い例です。他にも小さい故にセンサの盲点を突ける、などいろいろ頼めることはあるでしょう。
総意は、明確でした。
「動物たちにこんな悲壮な決意をさせねばならないなんて……」
ナイアデスが力抜けたようにしゃがみ込み、膝を突いて両腕を広げます。
集まる動物たちをナイアデスは一匹ずつ丁寧に抱きしめ、抱き上げて撫で回します。
その間に私たちの間でやりとりされた幾つか。
まず、ナイアデスが地上担当にならない理由。感情の起伏が大きすぎる。感情を殺してでも対処優先という状況に不安がある。
対しナイアデスの今ここでの必要性。動物たちの拠り所であり庇護として。
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