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2014年1月 4日 (土)

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-10-

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 では、38億年前と現在海洋とは、何か異なる点があるのだろうか。相原の独断では答えは然り。その海水移動を生じさせたエンジンこそは。

 

 月。

 

 一般に太陽系惑星は太陽の副産物……端的には“残りカス”であり、各惑星の従える衛星は、その更なる残りカスである。よって当然、衛星は惑星本体に比して小さく、例えば火星の衛星フォボス、ダイモスなど、球形ですらない。その中で地球の衛星、月だけは親分たる地球の四分の一ほどもあり、他の惑星に比べると際立って大きい。
 このため、月の出自は他の衛星と異なると考えられた。諸説立てられたが、コンピュータ演算などから21世紀初頭で最終回答とされているのが、地球に他の天体が衝突した、とされる“巨大衝突(ジャイアント・インパクト)”説だ。この衝突で地球はマントル物質までえぐり出され、そのマントル物質と、衝突した天体の物質とが地球外で集成し、出来上がった球体が“月”というわけである。これは月の物質構成、および、次の力学的性質を上手く説明できる。すなわち。

 

1.重心が偏っており、この結果、重い側をいつも地球に向けている
2.地球も月も、太古自転は早く、彼我の距離は短かった

 

 ここで着目するのは2.である。月はその引力により、地球に潮汐現象をもたらす。現在でも、有明海やポロロッカ現象に見られるように、波動の“共振”条件が整うと、大量の海水が高速で移動する。月が地球により近かったなれば、引力はより大きくなり、従い、潮汐のエネルギーは格段に大きかったことは容易に想定されよう。すなわち、ポロロッカのような巨大な波動が、巨大な月の満ち欠けに呼応し、地球全体という規模で駆けめぐった。その波動は、有明海で海底が露わになることを拡大すれば、深海レベルにも容易に達したであろう。そう、この潮汐力こそが、地球上に生命を“まんべんなく”分布させた原動力と仮定できる。しからば、太陽が父であり地球が母であるなら、月は嬰児(みどりご)を揺らすゆりかご、と言えようか。命は、その存在を月へ託すことにより、地球上に広がる……生き残るチャンスが増えたのである。

 

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