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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-13-

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「ひとり?」
 相原は問うた。この喉が渇くような感じは何か。
『うん。買い物だって……あの、ちょっと来てくれる?』
 昨夜来ほぼ一日ぶりの言葉のやりとり、と、相原は脳の片隅で意識した。無駄な緊張はそのせいか。
「調子でも悪いか?」
 言葉を選ぶ。腫れ物に触るような……我ながらどうしたことか。
『ううん、そうじゃなくて。大丈夫。話したいこと……あってさ』
 そんな状態の少女の部屋に男訪のうていいのか。相原は自問した。しかし断るのも不自然。
「そうか、判った。行くわ」
『待ってる』
 嬉しそうにも、頼っているようにも聞こえた声を耳に残しながら、相原は受話器を戻し、部屋を出、2階へ上がり、和室入り口敷居を軽くノックして、ふすまを開いた。
 日没直後、残照差し込む畳の部屋。
「お呼びで」
「迷惑ごめん」
 彼女は布団の中に座し、短い髪を下ろし、うつむいていた。その有様は、髪の毛と逆光を使い、表情を判りにくくしているようにも見えた。
 話題が何かは考えるまでもなかった。普通に、自然に、と言われてはいたが、この場においては無意識を装うことはかえって不自然に思われた。
 ふすまを閉め、歩いて近づく。
「お傍に来ましたぜ」
 傍らに正座する。姫に仕える侍従の口調はいつものパターン。
 彼女は相原の顔を見ない。
「生理になった」
 彼女は、そのまま、ぽつんと言った。
「聞いたよ。素敵なことだ」
 相原は姿勢を変えず、既知である旨正直に言う。
「ありがとう」
 彼女は言ったが、続く言葉はない。
 一般にこういうのは、全部知ってるからそれ以上何も言わなくていい、が理想であろう。恥ずかしいとされる内容であり、わざわざ言わせることではない。
 相原もそのつもりであったが、わざわざ呼ばれた以上、それを越えて、彼女からのメッセージがあると思った次第だ。
 

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