【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-18-
透視を働かせているのでほぼ全容は見えています。鉄板敷きの狭い通路で、トラックはのろのろ走り、ターンテーブルに載って停止。ブザーが鳴って180度回転。
荷台がステンレスの大きな扉に向きました。赤色灯が回転点滅し、上へ吸い込まれるように開いて行きます。
それは、逆に言うと、非常時には扉を高速で落とし、遮断できる構造。
運転手氏が降りて来てトラック荷台の煽り戸をカチャカチャいじって開きました。
コンテナごと扉の向こうへ送り込まれるようです。
〈どうしましょうエウリーさん。このバリアで耐えられますか?〉
ナイアデスの問いかけ。扉の向こうは銀色の6面体。壁も天井も全てステンレス製の特殊な部屋です。壁に貼られた注意書き等からガス室と判断します。なお、テレパシーに切り替えたのは万が一にも声が聞こえたら困るから。
〈この中は次元が違うから〉
私は答えました。開扉完了したらしく、赤色灯の回転停止。中に無人のフォークリフトがいて、意志持つように動き出します。音はしません。電動でしょうか。向きを合わせ、先端の2本のフォーク左右に開き、コンテナの下に差し入れて来ます。足の下に何かが差し込まれる擦れた音がし、ゴトリと揺れ、ふわり。
荷台から持ち出され、ステンレス6面体の中に持ち込まれ、下ろされます。ゴトン。乱暴というか落としたのと大した差は無い。
そしてそこは。
行き場を知らぬ悲しい魂のひたすら流離い。
〈先にすることがありそう〉
〈ですね〉
テレパシーによる交感は一瞬です。
以下一度に全て終わっていますが順を追って書きます。
ここを彷徨う魂達は私たち妖精の存在を知らないようです。野生であれば代々遺伝子に刻まれますが、ブリーディングであればそうはならないでしょう。
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