【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-20-
〈バリアは〉
〈健在〉
ナイアデスの呼びかけが注意喚起と気付きます。そう、このバリア維持するには気を張っている必要がある。つまりは私の意識次第。あとの心配は酸素の量。ただ、妖精が消費する酸素は小さい時のサイズで考えれば良くて、動物たちも似たようなもの。恐らく問題ない。
監視カメラが見ていると知ります。大丈夫、バリアの故に見えはしません。
ただ、生き物であればバリアの中は見えるでしょう。それは“見る”という行為が肉眼で光学的に見ているだけでは無く、バリアの中の私たちという存在を心でも感じているから。無意識にテレパシーが働くのと同じと書きましょうか。
いわば、幽霊が“見える”のと同じ理屈。
12分。
その間に私たちは彷徨っていた動物たちを、その霊を送ります。
今ここに共にいる、肉体的に生きている動物たちと違いを認識してもらいます。
もう、肉体は無いこと。
飲む乳は無く、エサを食べる必要も無いし、くれる存在も無い。そして撫でてくれる手も、舐めてくれる舌も無い。
寂しい、寄り添いたい、という気持ちが彷徨う子達に生じます。そこで、それが可能なのは“心だけが知ってる故郷”だと教えてあげます。
太陽が照らしていても、太陽に目を向けなければ太陽の光は見えません。
同じ理屈で、心の拠り所があることを認識させれば。
おいでという声が聞こえたはずです。一匹……いいえ、ひとり、またひとり、と、天の高みへ向かって次元を跳躍。
〈全員〉
〈逝ったよ〉
“命奪う場所”特有の空気感が消えました。
再びのブザーが響き、別の赤色灯が回転点滅。
そこで私は袖口に手を入れ、先ほどのコンピュータを再び始動。
バリアの外に出し、二酸化炭素濃度を測らせます。ドンと音がして換気装置が動き出し、風が生じます。画面の数値がみるみる下がり……ちなみに生命警告表示が出ましたが、それが消えました。
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