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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-14-

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 しかし、やはり、話をそこへ進めるきっかけが掴みづらいか。
 相原は自ら、但し、ゆっくりした口調で切り出す。
「昔、日本では……今もあるけど、お赤飯でお祝いしたんだ。子どもの死亡率が高かった時代に、女の子がそこまで成長した。そして、子孫への準備が出来た。純粋に二重の喜びだったわけ。今は、それで当然だから、むしろ、そういう風習を、わざわざ触れて回るなんてデリカシーのない行動!。って取る向きもあるけどね」
 彼は言い、反応を待った。
 彼女は彼の言葉の抑揚に“海”の印象を受けた。
 彼女は少し、時間をおいて。
「喜び……だよね確かに。あなた前に言ったよね。私のこと華奢で細いって」
「今は違うよ」
「そうじゃなくて。その時あたしそれ聞いて、ふーん……位にしか思わなかったんだ。誰々と比べて体格違うね、みたいな程度にね。でも、こうなってから、そういうセリフが何故か思い出されて、しかもことごとく印象が違って聞こえる。なんだろ……。
 自分、女だし、あなたも自分を女として認識してるんだな、って。えーと、言ってること、わかるかな」
 彼女は苦笑いした。伝わるかどうか心配で悔しくて、でも判ってもらいたくて。適切かつストレートな言葉がどうにも見つからない。
「俺、お前のこと好きだ」
 相原は、そう返した。
 彼女は、自分自身驚く位、身体を強くびくりと震わせた。
 首をひねって相原を見る。その顔は、相原には、少し涙ぐんだように、少し悲しげに、見えたようである。小刻みに震える瞠目が、振り返った少女を彩る。
 対し相原は特段驚いたようでは無い。正座不動のまま、彼女をまっすぐ見返す。それは彼女にとって逆に意外だった。自分の反応が通常と異なる時、いつもの彼なら『どうした、大丈夫か』と気遣って手を差し伸べてくるからだ。
「全然違うんだろ?聞こえ方が」
 それは、自分の苦笑いに対する彼の答えであった。
 

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