【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-15-
彼女は視界が歪むのを感じた。
自分がボロボロと涙流しているのを人ごとのように感じる。別に泣き顔を見られるのがイヤなわけではないし、見られたことも十指に余る。ただ、昨今その頻度が増えていること、及び、その質が都度異なっていることを同時に意識する。
それは恐らく、自分が変化の真っ只中にあったを意味した。ただ、そうと気がついたのは今があるから。
彼は傍ら箱ティッシュから一枚スッと抜き、彼女に差し出す。
「うん」
彼女は幼女のようにこくんと頷いた。
ティッシュに涙を吸わせる。そして、そういう頷きは今が最後であり、自分に幼女との決別の時が訪れたのだと意識した。
たった今、自分は変化の終焉の迎えたのだ。内的な完了を経て一気変身。それはさながら昆虫の脱皮、しかも羽化である。
それは心と体が密にリンクした新しいパラダイム。こう急激に変わるものなのだろうか。身体的な変化の認識で、一気に精神的にも変化したりするものか。それこそ昆虫の変態のように。
視界良好。ティッシュをポイ。
「へ……変なこと、訊いていい?」
わたし何言おうとしてんだろ。
「判る範囲なら」
相原は軽く頷いて応じる。それはいつもの、というか予想通りの反応。
でもいいの?とんでもないこと言うよ?
「男性も、そう、なの?」
う、うぅわっ!
「ああ、こういうことか。かな」
相原は表情一つ変えず、言った。
その即応性と恬淡さは彼女が拍子抜けするほど。
それは相原が全くの平常心であることを意味した。
これは父親の姿勢だ。彼女は得心が行った。小さな洞察と小さな驚きが彼女の心理を揺する。確かなのは少なくとも友達感覚で二人ここにこうしているのではなく、“公式設定”としているいとこ同士みたいな関係でも無い。友達や血縁者という枠に収まらない、されど近似性を有する何か。しかも、もっと強い。
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