【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-22-
「ここを壊します。ネズミ君達は電気ケーブルを囓って。ミミズク君は“いやな感じ”が弱い線を教えてあげて」
〈判りました〉
いやな感じが弱い。その狙いは電圧が低いもの、すなわち通信用のケーブルを噛み切る。
感電防止の観点もあるのですが、現在の工業プラントはネットワーク接続で自動制御が殆どです。こういう“なるべく人が関わりたくない”システムであれば尚のことでしょう。でくの坊にするなら、通信系の破壊で充分。
〈エウリーさんこれは?〉
ナイアデスが見たままの画像を送ってきました。コンテナリフトの後ろにぞろりと並ぶ歯車の羅列。
行ってみると粉砕装置と判りました。同じものを廃棄物処理場で見たからです。おどろおどろしい形状の刃が無数に並んだローラーが二つ。
挟んで回って下に落ちる。
そのローラー駆動用でしょう、モータと、そのモータに太い電線で繋がれた機器があり、機器に繋がっている通信ケーブルをネズミが囓って操作パネルがエラーを出します。その操作パネルもプラスチックなので囓って破壊。
すると中でショートしたらしく、スパークの小さな火花がパチパチ発生。
ならば。
より確実に効率よく、ここを破壊できる方法がある。
私はコンテナリフトに向かい腕を振り上げました。コンテナリフトはエンジン駆動、すなわち。
「エウリーさん」
止められない躊躇。彼女の意思を感じながら、私は念を投じました。
「まさか……」
「ええ」
彼女の認識は間違っていない。
拳から衝撃波。1回、2回、3回。
凹み、ひびが入り、そして漏れ出したので良しとします。
充満する油の臭い。エンジンが止まり、バタバタと殺到してくる足音。
「誰だ!」
制服の警備員が2名あり、特殊警棒を手に叫びましたが、彼らに見えたのは動物たちだけ。
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