【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-18-
そんなこと言ってくれなきゃ良かったのに。
でも、言わせたのは、自分。幼いおぼこだった自分。
その時はふざけ半分、楽しさ半分。
今になって、自分のしたことが“怖い”。
彼には言われたことがある。年齢相応の相手が見つかったらそっちを大切にしろと。
それが自然だと。
彼と、離れる。
記憶と言葉がリフレイン。幾度か繰り返し、気が付くと涙ボロボロで彼にしがみついている自分がいた。
彼には自分が突如押し黙り、突如泣きながら抱きついてきたという事態になったであろう。
自分が制御できない。
しかしどうにもならない。身も心も勝手に動く。
肩をぽん、ぽん、と叩く大きな手のひら。
暖かい。
「確かに、身体が大人になって行くことと、そういう気持ちや感情の存在は連動すると思う。だけど、ムリして同期させようと思う必要はないよ」
「ごめんね、わがまま」
それは確かな事実。
そして。
「ただね。ひとつだけ、ひとつだけ判ってて、言えるのは、あなたは私の最大の理解者だってこと。私のことを公然と……愛してるって言ってくれる人で、私は、そういう人がいるんだぜ、って紹介できるってこと。胸張ってね」
彼女は、無理にとバレていると承知の上で、笑顔を作った。
「ありがとさん」
相原学は、ただそう言い、その後、母親が帰宅するまでそばにいた。
でも、そうしていている間、彼に何も言えない自分があった。
最も、同じ時間をひとりで過ごしたならば、更に落ち込むような状態に至っただろうと判っている。
そばにいるだけ、が最大的確な回答であり、彼はそれを自動的・当然というレベルで用意でき、実践したのだ。
彼女は手を握る。
彼は優しく握り返す。
言葉はないまま。だけどそれしか出来なくて、それが彼の優しさで。
この涙は何のために出てきて、何を押し流そうとしているのか。
ただ前と違うこと。彼女はその涙を今度は自分で拭った。
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