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2014年3月 1日 (土)

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-18-

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 そんなこと言ってくれなきゃ良かったのに。
 でも、言わせたのは、自分。幼いおぼこだった自分。
 その時はふざけ半分、楽しさ半分。
 今になって、自分のしたことが“怖い”。
 彼には言われたことがある。年齢相応の相手が見つかったらそっちを大切にしろと。
 それが自然だと。
 彼と、離れる。
 記憶と言葉がリフレイン。幾度か繰り返し、気が付くと涙ボロボロで彼にしがみついている自分がいた。
 彼には自分が突如押し黙り、突如泣きながら抱きついてきたという事態になったであろう。
 自分が制御できない。
 しかしどうにもならない。身も心も勝手に動く。
 肩をぽん、ぽん、と叩く大きな手のひら。
 暖かい。
「確かに、身体が大人になって行くことと、そういう気持ちや感情の存在は連動すると思う。だけど、ムリして同期させようと思う必要はないよ」
「ごめんね、わがまま」
 それは確かな事実。
 そして。
「ただね。ひとつだけ、ひとつだけ判ってて、言えるのは、あなたは私の最大の理解者だってこと。私のことを公然と……愛してるって言ってくれる人で、私は、そういう人がいるんだぜ、って紹介できるってこと。胸張ってね」
 彼女は、無理にとバレていると承知の上で、笑顔を作った。
「ありがとさん」
 相原学は、ただそう言い、その後、母親が帰宅するまでそばにいた。
 でも、そうしていている間、彼に何も言えない自分があった。
 最も、同じ時間をひとりで過ごしたならば、更に落ち込むような状態に至っただろうと判っている。
 そばにいるだけ、が最大的確な回答であり、彼はそれを自動的・当然というレベルで用意でき、実践したのだ。
 彼女は手を握る。
 彼は優しく握り返す。
 言葉はないまま。だけどそれしか出来なくて、それが彼の優しさで。
 この涙は何のために出てきて、何を押し流そうとしているのか。
 ただ前と違うこと。彼女はその涙を今度は自分で拭った。
 

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