【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-19-
5
その後、彼女は居住地であるアムステルダムへと帰った。
彼女はアパートに一人暮らしであり、離れた二人の連絡手段は通常、インターネットのメッセンジャーである。しかし、彼女のハンドルネーム“レムリア”がオンラインと表示されることはしばらく無かった。
その間、相原は携帯電話を開き、アドレス帳を見つめては、しかし閉じるという動作を、何度か繰り返した。こうなると、コールするのも、コールを控えるのも、どっちもぎこちない。実際、相原側から提示する話題は無い。
相原は唇を噛む。1万キロ離れたいとこ同士、壊れたか。
一方の彼女……普段相原学にそう呼べと命じて(!)いるので、意を汲んでレムリアと書く……が、メッセンジャーを起動したのは3週間後のこと。
が、逆にいつもならオンライン表示される“学”はオフラインであり、携帯に掛けても留守番モード。
自宅そのものの電話番号も知っている。掛ければ少なくとも母親が出ると知っている。
でもどうしてか自制が働く。怖いようなこの気持ちは何なのか。しかも、それは彼を否定する言では無いのに。
彼女レムリアがメッセンジャーを起動したのには訳がある。ポインセチアの小さな鉢を重しに、一通の書面がテーブルの上にある。
ラブレター、なのだ。
もらったのである。身分隠して通っているアムステルダムのフリースクール。土地柄ブロンド碧眼の子が多いわけだが、比して童顔で黒髪のレムリアは、彼女自身の意識以上に男の子の目を捉えていた。もちろん多くはビジュアル・雰囲気からのアプローチであり、“まず互いを知る”というプロセスは経ていない。良くも悪くも“一目惚れ”である。が、今ここにあるこの手紙はそれらとは様相を異にする。曰く孤児院で見かけた、献身的な姿に応援したくなった、云々。ナイチンゲールに準えたポエムまで付いている。馬鹿にするのは簡単だが、詩になるほど大きく心を動かしたという見方も出来る。
(つづく)
(つづく)
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