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2014年3月22日 (土)

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-21-

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 ああそうか。
 彼女は洞察を得て思わず立ち止まった。既に彼氏がいるから……という書き方はあるか。
 いいわけとしてポピュラーと思うが何で思いつかなかったのか。相原を彼氏と自認してない故か。
 アパートまであと数十メートルの暗がり。
 普段なら、そうなる前に気付くはずである。
 しかし今のそれは、手遅れだ、という気付きであった。
 背中にチクンという感じの痛み。
「Non deve muoversi.」
 ボソボソっとした低い声。イタリア語で動くなの意。
 目の前に現れて行く手を塞ぐ、黒い革ジャンパーの男3名。
 その状況。彼女は4人の男に取り囲まれ、うち1名は背後から刃物を突き立てている、である。しかし、自分が実際そういう場面に遭遇すると、そうだという実感はなかなか得られない。
 むしろ何が生じているのかピンと来ない。
「Io L'assassino.」
 殺すぞ。
 背後から羽交い締めにされ、手のひらで口を塞がれる。男の腕による力任せの行動に対し、初めて防衛本能が働いて反射的に手足が動こうとする。しかし俊敏にして圧倒的な腕力差は恐怖を生みこそすれ、対処を何か考えるというステップに進まない。
 恐怖で萎縮してしまうのだ。よくある、“何故逃げないのか”という一般的問いに対する回答。
 ……何冷静に分析してるんだろう自分。
「È una figlia impertinente.」
 失礼とか、生意気とか、そんなニュアンス。次いで、女性に対する激しい罵り語と、無視しやがって、死ぬ目を見ろ、と付け加わる。
 羽交い締めの腕が自分の身体を引きずって動かそうとする。言葉の意味も判り、たった今生じようとしている事態も把握している。しかし身体は固まり思考回路は何も働かない。
 その時。
 

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