【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-21-
ああそうか。
彼女は洞察を得て思わず立ち止まった。既に彼氏がいるから……という書き方はあるか。
いいわけとしてポピュラーと思うが何で思いつかなかったのか。相原を彼氏と自認してない故か。
アパートまであと数十メートルの暗がり。
普段なら、そうなる前に気付くはずである。
しかし今のそれは、手遅れだ、という気付きであった。
背中にチクンという感じの痛み。
「Non deve muoversi.」
ボソボソっとした低い声。イタリア語で動くなの意。
目の前に現れて行く手を塞ぐ、黒い革ジャンパーの男3名。
その状況。彼女は4人の男に取り囲まれ、うち1名は背後から刃物を突き立てている、である。しかし、自分が実際そういう場面に遭遇すると、そうだという実感はなかなか得られない。
むしろ何が生じているのかピンと来ない。
「Io L'assassino.」
殺すぞ。
背後から羽交い締めにされ、手のひらで口を塞がれる。男の腕による力任せの行動に対し、初めて防衛本能が働いて反射的に手足が動こうとする。しかし俊敏にして圧倒的な腕力差は恐怖を生みこそすれ、対処を何か考えるというステップに進まない。
恐怖で萎縮してしまうのだ。よくある、“何故逃げないのか”という一般的問いに対する回答。
……何冷静に分析してるんだろう自分。
「È una figlia impertinente.」
失礼とか、生意気とか、そんなニュアンス。次いで、女性に対する激しい罵り語と、無視しやがって、死ぬ目を見ろ、と付け加わる。
羽交い締めの腕が自分の身体を引きずって動かそうとする。言葉の意味も判り、たった今生じようとしている事態も把握している。しかし身体は固まり思考回路は何も働かない。
その時。
« 【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-23- | トップページ | 【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-24- »
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】城下 -04-(2023.09.16)
- 【理絵子の夜話】城下 -03-(2023.09.02)
- 【理絵子の夜話】城下 -02-(2023.08.19)
- 【理絵子の夜話】城下 -01-(2023.08.05)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -24・終-(2023.07.26)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -24・終-(2023.07.26)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -23-(2023.07.12)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -22-(2023.06.28)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -21-(2023.06.14)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -20-(2023.05.31)
« 【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-23- | トップページ | 【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-24- »
コメント