【妖精エウリーの小さなお話】けだもののそんげん-26-
投げつけてきます。当然、手から離れた瞬間に念動力で粉砕。
「ゆ、幽霊」
花瓶を投げた男は、投げ終えた姿勢のまま、呟きました。
ゲラゲラ笑い出します。精神の正常を逸脱したことは明らかです。失禁しながらぐにゃぐにゃと座り込みます。
残り4人は気圧されるようにめいめい後ずさりし、壁に貼り付きました。
「やめろ。オレ達は命令されてるだけだ」
「そ、そうだ」
そこで私は人間サイズになりました。
動物葬儀社A。ペットショップチェーンB。共通の経営者C。
そしてこの工場D。
携帯電話の着信音。
「だ、誰だお前……」
「電話出たら如何ですか?」
鳴っているのは気の触れてしまった工場D社員の携帯。
「C社さんが異常に気付いて掛けてきたのではないですか?」
ちなみに私の質問は、応じた答えが意識に用意されるでしょうから、それを読み取ろうという意図。
「……お前どこの社のモンだ」
一瞬、質問の意味を判じかねましたが、
産業スパイの疑いとすぐに判りました。
工場は燃えさかっているのに、気にするのはそうした内容。
ひとまわりして斜め上を向いた、と表現しましょうか、異常な、ズレた反応という印象。
電話が切れました。
地下ですから電波は届きません。この工場が中継設備を持っており、それが電源を失ったのだと判ります。
「ちなみに火を放ちました。ここの破壊が目的でそれ以上は求めません。ただ、また同じことを考えたら同じことをします。その宣言のために私はここにいます」
私は言いました。
4人が相互に目配せ。と言っても、意図は丸見えなのですが。
作業着や警備服に忍ばせた得物(万が一の大型動物制圧用らしい)に手をした、と判じた瞬間、私たちの方も二人に増えます。
ナイアデスも身体を大きくしたのです。
« 【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-23- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-24- »
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】城下 -04-(2023.09.16)
- 【理絵子の夜話】城下 -03-(2023.09.02)
- 【理絵子の夜話】城下 -02-(2023.08.19)
- 【理絵子の夜話】城下 -01-(2023.08.05)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -24・終-(2023.07.26)
「小説・妖精エウリーシリーズ」カテゴリの記事
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-4・終-(2022.09.03)
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-3-(2022.08.20)
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-2-(2022.08.06)
- 【妖精エウリーの小さなお話】フォビア-1-(2022.07.23)
- 【妖精エウリーの小さなお話】翻弄-4・終-(2022.07.09)
« 【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-23- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-24- »
コメント