【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-23-
野球を知らぬ人間に取り、石礫ならまだしも、人体からそのサイズの球体が高速射出される有様は、機械的、非人間的に映じてもおかしくはない。すなわち不可解不気味に見える。
そして、そういう、ありふれたものをあらざる物へ変えてしまう術を持つ者。
駆使する工学のゆえに自分が唯一“不思議”と感じる人物。
前述、特異な言語の意味を幾つか解するもう一人。
「mostro!(怪物だ!)」
その子供じみた声の主は言うまでも無かった。
手紙の少年が震え出し、ナイフを取り落とし、既に逃げ腰。
「暴漢だあっ!」
リンゴを投擲する男は日本語でそう叫びこちらへ走ってきた。
深夜にコート広げて街路を走るその姿確かに怪しいが、恐れる対象ではないと彼女は知っていた。
相原学であった。
スーツにコートのサラリーマンスタイル。しかし確かに相原学であった。
相原学は表情が見える位置まで来て立ち止まると、自らのズボンのベルトを外した。
少年ら男達は相手が怪物ではなく人間だと判ったようではある。しかし“ベルトを外す”という意表をついた動作は、彼らの動作を一瞬だが停止させ、相原学の“次の動作”に注目させた。
その、注目した顔面に容赦なく叩き込まれるベルトの金具。
ムチの手さばきであった。相原学はベルトの一端を手に取り、その手を一旦男達に向けて投げ出すように伸ばし、次いで急速に手を手前に引き寄せる。
ベルト金具はその手の動きに遅れて追従し、しかし、金具は運動エネルギを重畳して男達の顔面を強打する。
囲む男達は大陸の体格であり、その点で確実に相原学は劣った。
ただ、相原学は力学を加勢とし、現代戦争の流儀を用いた。すなわち最初に“空爆”してダメージを与えてから、白兵による制圧に当たるのだ。
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