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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-28-

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 その後曲折あり、彼にとってそれは夢の記憶と混交し、追って“夢に出てきた娘”を主人公に、物語に書いていたという。
 そこへ再び、空飛ぶ船で降り立ったのが1年半前。
 共に船に乗り、現実だったと認識し直した彼は、船での活動において、幾度となく自分を守る盾となった。
 彼の好意はその時知った。自分に対して色々気を遣い、動いてくれる……心地よくあり、それを前提に動き、彼を困らせたこともしばしば。
 その気を遣ってくれる理由は何故?そんな形で彼から言葉を引き出した。目に見えて赤くなる彼が面白かった。幾度か言わせた。
 ただ、引き出した言葉の意味の重さは、多分その時はまだ、気付いてなかった。
 比して今。
 自分が、その時彼に言わせた“好き”と、たった今聞いた“好き”が別の意味で聞こえていると感じている。
 すなわち、自分に到来しているこの感情は、突き動かす情動は、彼が、自分に抱いた、その言葉とほぼ同意。
 いや、彼は、その特別な感情が意味する対象どころではなく、もう間違いなく、“自分を構成する一部”なのだった。
 つまり。
「ありがとう」
 彼女は、言った。
 そして、自分の心の事実に、任せて良い。
 だから。
「もう、離れていかないで」
 出てきたのはそんな言葉。
「これから、ずっと、一緒にいて」
「永遠でも」
 自分を抱きすくめる力が強くなる。多分、今、ふたりはひとつ。
 その感覚を欲する自分がいる。この感情は言葉にするなら、好き、では不十分。
 彼女は彼にしがみつく。否、抱き締め返す。
 愛する者を包むつもりで。
「私には、あなたが、必要。一生」
「君のためなら」
 そして、このまま、気持ちに対する証しが欲しいというなら。
「しても……いいよ。看護師ですから。知識は充分」
 

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