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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-29-

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 そうなってもいいと思った。そうしてくれという意味では無いが。彼が求めるなら構わないとは思った。その結果、妊娠しても……。まぁタイミング的に今夜の結果がそうなるとは思わないが、と冷静に考えてる自分に苦笑する。すると、生じていた熱いドキドキ、および、高湿度の気持ちがスッと散った。
「結婚したらな」
 果たして彼はそう言って身をほどき、今度は緩く抱き寄せた。冷静に考えるとプロポーズなのだが、敢えて考える必要すら無い。
 そう答えると判っていたから。
「うん」
 彼女は頷いて身体を預ける。しなだれかかるという奴だ。
 何か飛び抜けた領域に自分達一気に達した。それを二人して認識していると判っていた。恋人同士とか、婚約したとか、そんな言葉で表現できる段階を一気に超越し、二人を結んだと認識していた。結婚して彼との子どもを産むのだろう、家庭を築くのであろう。それは予感というか既定路線に過ぎない。だからプロポーズとか意識しない。時間線の向こうにあるんだというだけの話。今、二人の間には、それだけでは表現できない何かがある。生物である以上、キスして抱き合ってそして遺伝子の混交が愛の終着点のはずだが。
 この気持ちと現状は。
 地球上で人間だけが得られる感覚。
 全部がありのままでいられる世界。
 魔法の国に生まれた一人の娘でいられる空間。
 感情だの体面だのを有する人間だからこそ、それを考えなくて済む。
 いや違う。そんな小理屈の世界じゃ無くて。
 
 
 フレンチトーストを焦がした匂い。
 起きて部屋が暖かく、朝餉の匂い(但しそれゆえ焦げ臭い)が漂っている。
 こんな、こんな幸せな朝をこの部屋で迎えたことは過去に無い。
 ベッドを這い出す。布団の上にコートがかぶせられてあり、キッチンにおよそ場違いなYシャツにスラックスの168センチ。
 

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