【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-30-
「悪いがこっそり近づいてるのばれてる」
相原は振り返ってニヤッと笑った。153センチ用エプロンがいかにもちんちくりん。
「ちぇっ」
レムリアは笑って言った。昨夜着のままのブラウスのシワを伸ばす。
その瞬間。
呼び鈴が鳴らされ、破壊が来たと魔女の感覚が教えて寄越した。
以下オランダ語であるが、邦訳を意味するカッコ書きを略す。
「はい。どなた」
「警察だ。不法売春の容疑で逮捕する。開けろ。東洋人の男を客に取っているだろう。通報があった」
玄関向こうの男の声に相原が訝った。
「どうした?」
レムリアは唇に指をして“しーっ”と言おうとしたのであるが。
「いたぞ!」
「開けろ!さもないと!」
警告に対する彼女の反応よりも早く、玄関ドアに拳銃弾が撃ち込まれる。強引にして性急なやり方な気もするがさておく。オランダでは16歳以下の売春行為は違反である。
この状況下で、それとは違うと証明できるのか。
力任せに、ドアが開かれようとする。
そのとき彼女が思ったことは。
彼との、時間を、壊される。
「……!」
自分が、発狂したのかと、彼女は思った。
開いたドアの向こうへ、自分自身思いも寄らなかった金切り声の叫びを上げた。
王族の娘であるから、いにしえの習わしに従い、城の上から触れを出す。そのための発声訓練を受けていた。
応じた、大音声が、身体全体を震わせ迸った。
警官達は2人組であり、拳銃こそ手にすれ、何か防具の類を身に付けていたわけでは無かった。
彼らが耳を塞いだところへ、熱いフレンチトーストがフライパンごと、および、熱い紅茶の入ったガラスポットがそれぞれ投げつけられた。
フレンチトーストは顔面全体に飛び散って付着し、一方ガラスポットは割れて刺さった。
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