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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-31-

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 熱湯や、調理器に触れたことによる火傷は、すぐに冷めたり、手指を反射で引っ込めることにより、より以上の熱を浴びることは無い。
 しかし食材が付着する場合は別である。高温体が貼り付いたままになるからである。赤ちゃんが炊飯器をひっくり返して大やけど、などの例はままある。
 さておき、二人の行為は公務執行妨害以外の何ものでも無かった。
 警官二人の手が、双方とも拳銃から離れたところで、相原は二人に相次いで柔道の背負い投げを噛まし、部屋の中へ文字通り投げ飛ばした。それで作れた猶予数秒、食卓イスからスーツのジャケットを鷲掴みにし、レムリアの手を引き、アパートの階段を駆け下り始める。
「どこへ」
「ドロボーだい」
 相原の意図はすぐ判った。
 止めてあったパトカーに乗り込む。エンジンは掛かったままだ。
「船に乗るのはいつもどこから」
 相原はパトカーを動かしながら尋ねる。テレパス一閃、レムリアは彼に指示し、回転灯とサイレンを作動させた。
 船。その空飛ぶ船のこと。隠密裏に活動している国際救助ボランティア。
「そこの運河で……しまった!」
 レムリアは遠ざかるアパートを振り返り唇を噛む。こちらから呼ぶ際に使う衛星携帯電話そのほか、一式入ったウェストポーチを部屋に置いてきた。ちなみに、手品として“出したり引っ込めたり瞬間移動したり”を魔法で見せるが、それは現物が手元にあるからできる。
 この距離だと満月の力が無いと無理。
 ちなみに相原の電話にはレムリアの番号しか入っていない。これは万が一にも救助隊へのアクセスルートが漏洩したら困るからだ。相原自身は船を操舵するまで出来るが、立場はあくまでオブザーバレベルである。
「ごめん。肝心な時に」
「いいよ。中央駅(アムステルダム中央駅)行くぞ。案内してくれ」
「でも」
 警察無線が音を出し、非常線と追っ手の存在を告げる。もちろん、このパトカー自身を呼ぶ声も何度か。
 パトカーが勝手に動いていると判ればそれまで。
 タイムリミットは見つかるまで。
「いいんだよ。駅からどこかへ行ったと思うだろう。探す場所が増えて困るだろう。そう思わせたいだけ」
 

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