ユカちゃんハテナ王国へ行く【3】
「どこに連れて行くの!」
「いい加減になされませ!」
執事のような男性は強く言った。ピシリ!という言葉が似合った。
そしてそれは、最早戻りようがない状況に自分が追い込まれたのだとユカは悟った。
涙が勝手に出てくる。怖さ、悲しさ、寂しさ。
全部ごちゃ混ぜみたいな気持ち。
何これ。勝手に連れ出されて、しかも、
「おこられた。おこられた……」
あたし、何かした?
「何もしてないのに。下ろせって言っただけなのに~」
ユカは顔を上に向けてわんわん泣いた。男性は腕組みし、目線を外に向け、イライラしたようにその腕組みした指先を小刻みに動かしている。
と、急に馬車がガタガタ言い出し、ユカは何事と外を見た。
見えた風景に涙が止まる。クレヨンで虹色に塗ったような地面が波打つ。
土の道を馬車は走っている。お菓子のような、甘いにおいが漂う。
白い服を着た人たちがいて、この馬車が通るのを見るや、大げさなポーズで頭を下げる。
「ああ、そんな服で見られてはたまりません」
執事のような男性は言うと、馬車の扉のカーテンをさっと閉めた。
「お召し物はどこへ置かれたのですか?」
「何のこと?TKG?」
さっぱり意味が分からない。メシなら今朝はタマゴ(T)かけ(K)ご飯(G)を食べた。
「もう一度お叱りしないといけませんか?」
今度はだんだん腹が立ってくる。何なのこの態度。園長先生なんか立派でも優しいのに。
「変なこと言わないで。勝手に連れてきたくせに。人さらい。誘拐、人間泥棒、スケベ変態エロ痴漢、アホバカ間抜けちんちん毛だらけもーじゃもじゃ」
ありったけの悪口言ったつもり。
しかし、執事みたいな男性はニヤニヤ笑うだけ。
「降りる。帰して」
ドアをガチャガチャやる。開かないとは判っているがめいっぱいの力でガチャガチャやる。いかのおすし、いかのおすし。
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