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2014年6月 4日 (水)

ユカちゃんハテナ王国へ行く【1】

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「ねぇなんで?」
「今忙しいから後で!」
 ユカは図鑑を片手にお母さんに尋ねた。しかしお母さんは振り向くこともなく、洗濯機から掘り出した洗濯物をカゴに放り込むと、リビングを横切り、ベランダへ行ってしまった。
「つまんない!お母さん嫌い!」
「嫌いで結構」
 ユカは怒ってブゥとふくれると、図鑑を手に廊下を逆に歩き、玄関を開けて外へ出た。
 ユカが住んでいるのは3階建てのアパート、階段を降りて1階部分は通り抜けの駐車場。トンネルみたいなそこを抜けると、道へ出られる。
 と、その道に見慣れない車。
 まんまるい形の白い車。
 大きなタマネギに車輪を4つ付けて運んでいるような。
 そして、クルマの左側には馬がいる。
 ユカは気付いた。違う違うこれ馬車だ。
 二頭の馬に牽かれた馬車が止まっているのだ。
 馭者席(と呼ばれる場所だが、もちろんそこまでの語彙は幼稚園年長のユカには無い)には、燕尾服にシルクハット、白ヒゲという男性がいて、何か探すようにあたりをキョロキョロ。
 そしてユカの方を向いた。
「おお、姫様そこにあらされたか」
「え?」
 お姫様どこ?ユカは自分の後ろにいるのかと思い、振り向いたが、誰もいない。
 ふわっと風吹くような感覚があって、後ろから抱き上げられる。
「あ!あ!何するの!いかのおすし!そうだ。大声。誰かー!人さらい!」
「何をおっしゃいます姫殿下」
“いかのおすし”は、誘拐対策で警視庁が子供達に覚えさせている標語の略記である。
 
知らない人についてイカない
車にらない
おごえをだす
ぐにげる
らせる
 
 ユカは「お」に基づき大声を出したが、大人の体力にかなうわけも無く馬車の中。
「少々おいたが過ぎますぞ姫」
 白いヒゲの男性は怒るように言うと、馬車の扉を外からガチャリ。馭者席に戻ってなにやら話す。
 
(つづく)

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