【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-38-
パトカーは典雅な乗り物を避けるように動き、図書館、のみならず周囲建物へも横付けされる。馬車はその物々しいを抜け、淑やかに隣ブロックの街路を巡り(要するに遠回りをし)、駅へ戻る。但し先ほどパトカー乗り捨てた、捜査が続く一般向け入り口ではなく、その傍ら、王室用車寄せへ。物々しい中の場違いな典雅もあろう、パトカーも、一般市民も、驚愕の目で馬車を見やる。
「王室用かよ」
驚いたのは相原。
「そう」
「ひょっとして、警察に追われていますか」
ジェフ氏が訊いた。馬車の窓は開けてあり、馭者席との会話は充分。
「ええ。行き違いがありまして」
「そうでしたか。それで私どもの列車をご選択は賢明至極。さぁ着きました」
総大理石の王室用車寄せに馬車が止まる。全て始まりのその日、キャリーバッグを引いて訪れた入口。および、高額のツアーに参加した上流の人々が集った待合。
今は照明も無く、暗く、冷えびえ。
ただ、それでも開いているのは、ジェフ氏の手回し。
「こちらへ」
ジェフ氏が走り、次いで相原に手を引かれて走る自分。
まるで、式場から連れ去られる花嫁の気分。
着っぱなしのブラウスにジーンズだが。
駆け上がる大理石の階段。
そして。専用ホームに止まっているのは。
(模型です)
「フレッシュドール・プルマン(Fleche d'Or・Pullman)」
現れた列車を見、相原がまず言った。ベージュとブラウンのツートンカラー。両端にデッキがあって手開きのドアがある。並ぶ窓の向こうに並ぶ豪奢なソファ。
「借りた?これを借りたのか?」
「ええ」
問い返す相原にレムリアは頷く。
「さ、ご乗車下さい。乗ってしまえば、国境越えの警備に関する権限は私に委譲されます」
ジェフ氏が金色のハンドルをカチャリと回し、楕円窓のドアを開く。
(つづく)
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