ユカちゃんハテナ王国へ行く【8】
「殿下、それはですね……」
「それは月食という現象です」
セバスチャンが何か言いかけた。多分答えの耳打ちだったのだろう。しかしユカはその声を遮って言った。
「げっしょく?」
「そうです。太陽に照らされた地球の影に月が入ると、月に光が届きにくくなり、赤っぽく見えるのです」
「どうして赤くなるんですか?」
「夕焼けを見たことがありますか?」
「はい」
「何色になりますか」
「赤です」
「ですね。赤い光は遠くまで届きやすいのです。なので、月が地球の影に入っても少しだけ届いて、月が赤く光るのです」
どうだ完璧!
ところが。
「なんで赤い光は遠くまで届くのですか?」
え……知らない。ユカは困った。ちなみに、波長が短い方が散乱されやすく、比して波長の長い赤い光は遠くまで届く、が科学的な回答ではある。
ただ、ユカは別の答えを絵本で見ていた。
「それは……真っ暗になったらお月様寂しいじゃない。だからよ」
ユカの答えに、集まった人たちはどよもした。
「姫様……」
少し驚いたようなセバスチャン。
「ありがとうございました」
男の子は納得したらしい。すると今度は大人の女の人が挙手。
「はいどうぞ」
「ハチミツというものはどうやって出来るのでしょう」
「姫様それは……」
セバスチャンが言いかけるが、こっちもその必要は無い。
「ハチたちが一つ一つの花から集めたものです。少しずつが積み重なって、いっぱい、たくさんのハチミツになるのです」
図鑑に書いてあった。すると。
「どうやったら手に入れることが出来ますか?」
何その質問。
「お店で売ってませんか?」
「お店?お店って何ですか?」
「は?」
「は?」
「ひ、姫様……」
焦っているように感じるセバスチャンの声。
よく分からないが、お店というものを知らないというなら。
「ハチは巣を作っています。ハチの巣に行けばたくさん集まっていますよ」
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