ユカちゃんハテナ王国へ行く【5】
この地は、馬車に乗せられて連れて来られたこの地は、花が食えるのか。
それこそ図鑑で食用としてあった一部の菊のように。
そうだ図鑑!ユカは見回したが見つからない。
その前に、そうやって首を回したらチクチクするのが極めて不快。
「かゆい」
ユカは首回りをボリボリ搔いた。新しい服着るとよくあることだが。
「あたしの服は?これヤダ」
「処分しました……その、姫が、端的に申しますとゲロを吐かれたもので」
セバスチャンは言い、バラの花ムシャムシャ食べながら窓を押し開いた。
風が入り、カーテンや調度が揺れ、音を立て、そして、
いい匂いが乗ってくる。ユカは思わず立ち上がり、窓の外を覗きに行く。
森と、草むらの境目が視界の左側にあり、その境目が奥へずっと続いている。草むらは緩やかに波打ち、人々がゴロゴロ寝ている。
しかしこのいい匂いは何だろう。香ばしくて甘そうで。
食べたくなるようないい匂い。
「今日は前庭解放日ですので」
背後足音と共にセバスチャンが言った。
そして、ユカは、見た。
人々が草をむしり、そのままむしゃむしゃ食べている。
根っこの土が付いているところは、さすがにちぎって捨ててはいるが。
これは、夢ではなく?
ユカは身を翻す。ベッドの向こう鏡台の上。
バラを手にする。家で枝差しを繰り返して咲かせているパパメイアン。お母さんがおばあちゃんから切り分けてもらったもの。
対してこっちのパパメイアン。
「どうぞ」
花びらを、ちぎって。
口へ。
香りと共に広がるさわやかな甘さ。噛む必要を感じない口溶け。
痛いとか、後から変な味とか、そういうことはなさそうである。
食えるらしい、この国のパパメイアンは。
花びらをむしっては食べる。食べられると判った瞬間に急にお腹が減った。
めくっては食べ、しているうちに、花びらは無くなり、芯の部分。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -020-(2024.09.14)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -019-(2024.09.07)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -11-(2024.09.04)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -018-(2024.08.31)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -017-(2024.08.24)
「小説・大人向けの童話」カテゴリの記事
- 【大人向けの童話】謎行きバス-63・終-(2019.01.30)
- 【大人向けの童話】謎行きバス-62-(2019.01.23)
- 【大人向けの童話】謎行きバス-61-(2019.01.16)
- 【大人向けの童話】謎行きバス-60-(2019.01.09)
- 【大人向けの童話】謎行きバス-59-(2019.01.02)
コメント