ユカちゃんハテナ王国へ行く【11】
うまく行ったらしい。男達がサッとその場から離れ、空いた空間に胴上げ失敗みたいにドサッと落ちる。
だが、階段もフカフカ絨毯、ユカも体重20キロなので全然痛くない。
でんぐり返って仰向けになり、冬のオリンピックのソリ競技(リュージュのことであろう)みたいに、男たちの足の間ずるずる滑って下までドン。
城の玄関口に出たらしい。その向こうには庭に集まった人々がいて、こちらを覗き込んでいる。
「助けて!あたしここの城に人さらいされたの」
ユカは人々の中に駆け込んで行った。が、誰も動かない。
「警察は?お願い、だれか助けて」
困ったように自分を見つめる人々の目。
「無駄ですよ……全くとんでもないことになったもんだ」
勝ち誇ったようなセバスチャンの声。
ユカはゾッとしながら振り返った。おとぎの国の人々が、悪者の変なクスリや電波でおかしくされて、とかアニメや童話で見るが。
「我がハテナ王国に警察組織はありません。ここは、何も知らない人々が何も知らないまま、何でも食べて暮らせる平和な国です」
そのセリフ、そんな頓狂な童話に近い。
イコール、ここ、いちゃいけない。
「それっておかしくない?」
ユカは振り返った。キッとなって問い詰める。詰問という奴だ。
対してセバスチャンはニヤニヤ。
「何故ですか。なまじ知らないことがあっても姫様が国民の皆に答える。これで生きていて何の不自由も無いではありませんか。しかし困りましたね。あなたにこのまま帰られると困るわけですが、さりとてユーカ姫を探す手がかりはあなただけ」
「それって私が言いふらしてバレるの怖いって奴?フン、こんな国があるなんて言っても誰も信じないよ。逆に私の頭がバカになったと思われるだけ。私の住んでるところ?世界と言うべき?ではね。でも、ユーカ姫も可哀想だね。毎日毎日こうしてバカみたいな質問されて答えてたわけでしょ。そのくらい自分で調べろって。逃げたくもなるんじゃない?」
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