ユカちゃんハテナ王国へ行く【10】
するとセバスチャンはユカを抱きかかえ、塔の階段を降りてフカフカ絨毯の廊下まで戻った。
ユカを下ろし、しゃがみ込み、バラの花みたいに広がったドレスの裾をバッとまくり上げる。ものすごい堂々としたスカートめくり。
「膝のほくろがない……おお、なんと言うことだ」
セバスチャンはユカから離れ、立ち上がると、ユカの周りをぐるぐる何度も回ってじろじろ眺めた。それからマンガみたいに目を丸くし、両手で頭を抱えた。
ようやく、自分がユーカじゃ無いという結論になったらしい。
ともあれ、脱走するチャンス。
ユカはドレスの裾をたくし上げ、更に抱きかかえて走り出す。
3
イヤな結婚から逃げ出す花嫁。
「あっ!」
セバスチャンは絨毯がフカフカ過ぎるせいか、追いかけてこようとして転んだ。
一方ゆかは体重が軽いせいか、フカフカに余り沈み込まず、案外早く走れる。
「誰か!誰か捕まえろ!そいつはユーカ姫の偽物だ!」
「何それ!」
ユカは走りながら怒鳴った。自分で間違っておいて失礼千万!
長い廊下、その行く先ドアが次々開き、黒服に黒めがねという男たちがわらわら出てくる。
しかし捕まる気がしない。伸ばされた腕はよけ、飛びかかってきたのはその下をかいくぐり。
立ちはだかれたらフェイント噛ましてすり抜け。
ひとりにドレスの裾を掴まれたが、そのままずぼっと脱げた。
パンツ一丁。しかしむしろ身軽。
下へ行く階段を見つけて降りる。
階段下から男たちがぞろぞろ。階段横いっぱいズラリ並んで通せんぼ。
そんなのが何列も。
ユカは……しかし迷いなし。同じようなのアニメで見た。
「じゃ~んぷ!」
ユカは思い切り飛び上がった。
そのまま階段にギッシリ詰まった男たちの上にどさっ!
こうすると人間の“防衛的反射行動”で咄嗟に避けようとするのだそうだ(作者註:この確かな情報源を私は知らぬ。従って常に通用するという保証は出来ない)。
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