【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-48-
そして今気付いたこと。自分について、多くの人はまず外見について述べるが、ことこの男に関する限り、外見に関する意見はたった今初めて聞いた。
「恐れ多きこと。俺の姫様」
相原は言い、握手をするように手を出した。
テーブルを挟んで互いに手を伸ばし、そしてどちらともなく、そのまま立ち上がって、そっと顔を近づけ、
キスした。
目を閉じて、首傾けて、唇と、唇が触れ合っただけ。
但し相手の体温が判る程度に。
見つめ合ったまま、距離を離し、お互いの椅子に戻る。
レムリアは震え戦慄くような自分を意識する。
大きな変化が自分の身に生じたことは理解した。人間として、女として、男を愛せるようになったのだという実感であった。この感情と衝動のことであったか。
身体が熱い。だから相対的に空気が冷たく感じ、震えが出るのだ。
「ああ姫君、大丈夫ですか」
身震いの仕草を見、コンパートメントの列車長が腰を浮かせる。
「いえ大丈夫です」
レムリアは畳んだブランケットを軽く羽織った。ジェフ氏は大げさなまでに胸をなで下ろすジェスチャーを見せ、コンパートメントの椅子に戻った。携帯電話を手にしており、漏れ聞く英語ではディナーやらベッドメイクやら。
震えが収まる。
熱さが、強さに、変わる。
そしてレムリアは目を見開いた。このアナロジー、シンクロニシティ。
「どうした?」
「あのね」
自分の魔法能力。アルフェラッツ・ムーンライト・マジック・ドライブ。
「最初に身体が熱くなる」
「確かに」
「で、力になる」
「うん」
「同じ現象が起こった。今のチュッで」
相原は頷くと、すっかり冷めたコーヒーを飲み干して。
「君はずっと能力の使い手としては半人前だと言ってたね」
「うん……あ」
後はわざわざ言葉に置き換える要はなかった。この気持ちを載せて送れば良い。
月がなくても、同じ事が出来る。
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