ユカちゃんハテナ王国へ行く【16】
「ひ……姫様……」
それは最高の秘密に属することなのだろう。ユカは直感し、次いで、自分たち殺されるんじゃないか。そう思った。しかし。
「大丈夫。卑弥呼様味方だから」
ユーカ姫は自信満々にそう言った。
卑弥呼。大昔の日本の巫女。女神のような人。古事記のついでに聞かせてもらった話。
すると、セバスチャンが後ずさりした。
まるで呪文を聞かされた悪魔のように。
「私分かったの。みんなで仲良くしているのが本当の平和なんだって。でも、こいつらには“勝ちと負け”がはっきりしてるのが平和なの。そして狙ってるの。ここの金を持って中つ国に躍り出る機会をね。中つ国では金があれば権勢が手に入るでしょ。自分が勝ちでいられる。世界を支配できる。そして、支配するためには、住んでる人が“負け”と感じたら困るわけよ。だから何も教えず、負けを感じさせずに、負けににしておきたい。それを多分ここで練習している。でも、そうは行かないから」
「いじめっこみたい」
ユカは言った。
そういう子なら幼稚園にいる。みんなで仲良くすればいいのに、おとなしい子にわざわざひどいことをする。
泣かせて、それを見て、喜んでる。
「ひ・み・こ……」
ユカが言ったのに、セバスチャンは感電したみたいにびくんとなった。
「なんで怖がるの?」
ユカは逆に不思議に感じ、姫様に訊いた。
「この人たちはこの人たちなりに神様がいるわけ。で、何がどうしたか、はてのくににたどり着いた。そこは違う神様でみんなニコニコ。争いが起こらない。それはものすごい強力な神様が支配してると。仲良くが理解できなかったわけよ。ところがある時、みんなが“怒ることを知らない”ってことに気付いた。それでやりたい放題」
「お姫……」
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