ユカちゃんハテナ王国へ行く【17】
「うるさい!……気付かれなきゃいいだろうと。もう手遅れだけどね。でも安心しなさい。このユカちゃんを無事に返し、人民に中つ国と同じ程度の生活と知識を与え、民主的な国としての体裁を整えること。そうすればあなたがたがここに暮らすことを許します。だってそうしないと、あっという間に、中つ国の食べ物を食べた瞬間、本当の年齢になってしまいますからね。私もだけど。こいつらはその辺解決すれば中つ国へ行くつもりだわ」
それは、ユーカ姫も中つ国……今の日本に戻れば“243歳”になるということ。つまり多分は死んでしまう。
「ここにいればずっと生きられる。でもずっと今のまま。誰にも会えない。会う人ももういない。でもだからって今すぐ死ねるか?……私にはもう選ぶ道は無いんだ。さぁ、ユカちゃん。帰りなさいな。馬車を!」
「はい。はい、仰せのままに。おい、馬車を」
セバスチャンは慌てたように言い、乗ってきた馬車を用意させた。
どこからか蹄鉄カッカと音立て走って馬車が来、人々がスペースを空け、馬車の戸が開く。
「この馬車はドミニオン。こいつらが持ち込んだ。この果ての国みたいな、切り離された国へ行くことが出来る」
「ドミニオン……天使の名前の?」
「よく知ってるね」
ユーカ姫が驚いた。天使は9つの階級を有する。トップがセラフィムで一番下が普通の天使、エンジェル。ドミニオンは4番目。ちなみにエンジェルは人間の姿に似ている。上に行くほど人間的では無くなり、セラフィムはもはや光の塊とか。
「幼稚園に教会の人が来て習ったもん」
ユカは答えた。ちなみにお寺と教会の交流会みたいな催しがある。
馬車に乗る。ふんわりした、抱っこされているような乗り心地は、ひょっとすると、こういう形の天使様に抱かれているのか。
眠い。
「じゃぁね……」
見送るユーカ姫にどう返事をしたのか、覚えていない。
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