【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-51-
9
アルフェラッツ王国。レムリアの故国。
欧州の“インターナショナル・ステーション”や“セントラル・ステーション”と名乗るそれらは、かつて王権の名残もあろう、豪壮な出で立ちである場合が多い。
しかしアルフェラッツの場合、様相を異にする。中世以降の城郭都市がそのまま独立国家として存続しているものだが、鉄道網が敷かれ、欧州各国を列車が結ぶようになるのに伴い、壁の一部に駅を作り込むという対応を取った。城壁をくりぬき、線路とプラットホームを配したのである。全体が大理石躯体に覆われており、照明が無ければ中はほぼ真っ暗である。しかも線路は単線の本線から側線が一本分岐しているのみと極めて簡素だ。これらの構造はアルフェラッツに訪れた王侯・外交使節の専用列車が“長居”不可能・不要であることを象徴する。
レムリアはその辺の手配をすべきであったことに今更気付いた。現状、国として唯一の駅であり、日に数本の停車がある。次のアクションは現状見えず、この列車を留置しておくことはできない。
「あの……」
「大丈夫です」
ジェフ列車長の曰く、この復古車輛群は個人所有。普段はオランダの港町、フーク・ファン・ホラントの引き込み線に留置。他、クルーズ列車として欧州全体に赴くことから、各国の国有・私有鉄道と契約し、あちこちに“常宿”がある。
ジェフ氏は以上説明し、制服胸ポケットの帳票をめくり、
「この後はブカレストで昼間滞泊(たいはく)、翌日オランダへ戻る行程です。その間ご用あれば対応できますのでお呼び下さい」
「はい。ああ、良かった」
レムリアは真っ直ぐ答えた。
「ご心配ありがとうございます。では、また機会があれば」
「お待ちしております。では、どうぞ行ってらっしゃいませ旦那様」
ジェフ氏に送られてプラットホームに降り立つ。
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