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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-05-

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「しかし……初めてお邪魔するのに、いきなり夕食にお呼ばれとか本当にいいんでしょうか?」
 田島綾は軽い調子でそう言った。
「だって……親身になってくれてるのに、週末のこの時間じゃん。おもてなししなくちゃ、でしょ」
 北村由佳はそう言うと、田島綾の向かいに座った。
「じゃぁ、いただきまーす」
 全く無関係に食欲は食欲。そしてこれは空腹の所為ではあるまい、スープからは美味を予感させる匂い。
「単刀直入に訊くけど」
 スープのカップを口に運ぶ田島綾を見、北村由佳が口を開く。ああ、そっちが本題でしたね。
「ん?」
「あたしって、どう思われてんのかな、黒野さんに」
 さんざ迷惑かけやがって、だろ、と田島綾は反射的に言おうとし、母君が鮭のカルパッチョを持ってきたことに気付いて、
「あ、どうも……つーか、りえぼーなら直接言ったと思うけど?あの娘(こ)婉曲な表現嫌いだしね。それで何も聞いてない、ってなら私だって判らない。大体、クラスの違う私に、あなたの話題を振るわけが無いわけで。そもそも……」
 以下飲み込む。そもそも、あなたと私は友達ですら無いでしょうが本当は。だが、そこを言わなくても倒置法で文章自体は成立するな。
「黒野さん……だけなんだよね、自分と喋ってくれるのって」
 北村由佳はうつむいて涙をこぼした。
 ああそりゃそうだろうと田島綾は思った。この……表現しづらいが“押しつけがましく突っぱねられる”印象は近づきたいとは思わない。
 よって北村由佳はクラスで孤立を見ている。理絵子はそこにいじめの兆候を捉えて積極的に声をかけるであろう。
 容易に想像が付く。で、前記分析に繋がる。
「お義理で口聞いてくれてるのかなって」
 そのお義理でもそれとなく気付かせず、平静に出来てしまうのが理絵子である。
 

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