【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-53-
以下、王女がメインストリートを一人で歩き、後ろから執事の如く相原が付き従う、という図になるが、住人イコール国民は、目を合わせ会釈はするがその程度。
「財政は税金ベースでほぼ赤字。電気ガス水道の生活インフラは近隣国から購入。王家の仕事はその辺の条約取り付けと裁判。昔は無償で提供を受けてた。魔術で国家間の平衡を取る代わりににね。その点、ここは魔術不要の世の中にあっても地政学上、宗教的影響圏の境目にあって体のいい緩衝地帯なんだ。だから内部からも外部からも他国との併合やEU加盟と言った話は出てこない。侵略も旨みは無いんだろうね。人も産物も無いからね。通貨は過去の経緯もあって自国独自の物は持たず、その時代時代のデファクトスタンダードが流通。だから今はEU非加盟だけどユーロ」
「大学の教養の講義みたいだ」
「ごめんね堅い話で。でも、フィアンセなら知っておいて欲しい。だから、王家終了の話があるわけよ。私の即位はなし、で」
「王家無くしてその後の政治は」
「サンマリノを参考にしようって。ボランティアの推薦議会制共和国。今の議会がそのまま最終決定権を持つ代わりに、議員選考システムに手を加えましょうってわけ」
おもちゃ屋の前を通りがかり、男の子が彼女を見つけて手を振る。それは国民すべからく冷たい反応では無いことを示す。
レジ内、男の子の所作を見た女性が振り仰ぎこちらを見、レムリアは立ち止まる。
女性は立ち上がり、店の扉が開いた。
「(これは姫様)」
声に彼女は笑みをひとつし、男の子に手を振る。おもちゃ屋の女主人である。公用語はラテンの生き残りという。カッコ書きは邦訳を示す。
「(突然で驚きました。大きくなられて、大人っぽくなられて)」
女主人は傍らの男の子を促し、二人で胸に手を当て、頭を下げた。敬意の表明。
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