【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-10-
すなわちプロテスタント系ということか。中に入ると廊下を通って家屋を出、別棟プレハブへ通される。プレハブ内部のイメージは“町内会の集会所”。ざっと見る限り、いわゆる“宗教くさい”什器デザインは見られない。日曜学校の後なのでパイプいすが並んでおり、大人と子供数名で片付け中。目に付くのは賛美歌用であろうかオルガン、壁にはイスラエル地域の地図。左右は本棚で聖書や関連絵本っぽいもの。百科事典のようにズラリと並んだ凝った装丁の書物群。
「どうぞこちらへ」
促されて目を向けると、いすが除けられ出来たスペースにカーペットが一枚。北村母子が正座し、他の数名も同様に正座。他の数名はいずれも母子の組み合わせと見られ、2人ずつ計4人。隣同士に座っている。
全体としては車座の形状、空いたスペースは自分が入れと言うことか。
子供達の声が聞こえなくなった。
「失礼します」
周りに合わせて正座。カーペットを敷いたとは言え、板の間、痛い。
「何も難しいことはありません。神様にネガティブな意見を報告します」
牧師はいきなり言った。
見上げると自分を見ている。自分へ対する説明を始めたのだと田島綾は知る。
座した他の人々に目を走らす。北村母子は自分を見ており、他は両手指を祈るように組んでうつむき加減。
北村由佳が口を開く。
「ネガティブ意見ってのはね……何だろ、イヤとか、悪口を思い浮かべたとか、自分を否定したとか、そういうのを口に出して神様に聞いていただくの」
補足説明。彼女は理絵子と一悶着あってからここに通うようになったと言った。なるほど、判らぬでは無い。
そして、その北村由佳が挙手した。
「じゃぁあたしからやります。田島さんがもしかすると来ないかも知れないと思っていました。人を疑う心がわだかまっています」
こう言った。
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