【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-12-
褒めそやされて歯が浮く。
が、それと同時に、身体が軽くなるように感じる部分も正直言ってある。「意識してもしなくても、自分と他人を比較して自己評価行動をしちゃうのが思春期」とは他ならぬ理絵子から聞いた言葉であり、文芸部の発表するマンガ小説表現上の留意としているが、その“無意識の比較”をたった今自覚させられ、そして自己評価が多分にネガティブだった、という理解に達した。
牧師が謝礼の言葉を締め、アーメン。
北村由佳が言う。
「黒野さんがあなたのことを親友と思っている理由が判った」
田島綾は首を傾げた。
逆なら判るが。自分を?……顔を指さす。
「私?」
「そう。あなたと居ると心地いいんだと思う……その、知っての通り私、黒野さんには邪推していたことがあって」
端的に言うと北村由佳の片思い相手が理絵子を好きだと知って嫉妬したのである。
ただ、彼の告白を理絵子が拒絶、失敗に終わった。その旨伝え聞いて落ち着いたのが昨今北村由佳の状態。
比して理絵子の方はどう思っているのか。それで田島綾に声を掛けた。北村由佳は時系列をそう説明した。
彼女が自殺未遂騒ぎを起こしたことは、騒ぎの最中駆けつけた当人としてよく知っている。ただ、そうなるに至った背景を理絵子は言わなかったし、田島綾も問わなかった。
「背景初めて聞いた。りえぼーは、一言もそんなこと言って無いよ」
田島綾は言った。
逆に驚いた表情を示したのは北村由佳。
「え?だって親友じゃ」
「だからって、それって北村さんの最高の秘密でしょ。べらべら喋る?しないよりえぼーは。りえぼーなら」
すると。
「それは、少し、問題かも知れませんね」
どこぞの母親殿から声が上がった。
「ええ、その、黒野さんの心持ちには思い上がりを感じます」
別の女性。
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